ようこそ、沖縄の海辺へ。

ヤドカリ類

 

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側溝に落ちて出られない

 沖縄のオカヤドカリ類の生存を脅かしているのは、密漁だけではありません。
人口構造物を乗り越えられなくて、死んでしまうオカヤドカリ類もたくさんいます。

 陸地に棲むオカヤドカリ類も、卵から生まれたての幼生は、海で過ごします。
オカヤドカリ類は、海と陸とを行き来する生き物なのです。
  ヤドカリ類は、宿貝の中で卵を産み(産卵)、雌の腹部にある腹枝の毛に
卵を付着させます(抱卵)。卵はそこで発生を続け、孵化が近づいた卵は
卵の殻をすかして内部に黒い眼が二つみえるようになります。雌は、
卵の孵化に合わせて、陸から海に移動します。

 上の写真は、新しくできた道路の側溝に落ちたムラサキオカヤドカリです。
側溝の左側のコンクリート壁を降りて来て、右手にある海に向かう途中で
落ちてしまいました。新しいコンクリートの表面は滑らかで、
登る事ができません。

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道路を横断中、ひき逃げ

 たとえうまく側溝をよじ登っても、車が往来するアスファルトが
待ちかまえています。

 道路は車が通るだけでなく、夏場はものすごく高温となり、
小さな個体には危険な場所です。

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絶壁を降りるのは勇気がいります

 なんとか道路を横切ると、続いてコンクリートの絶壁が….。

 垂直で滑らかに仕上げられたコンクリート壁は、岩登りが得意な
オカヤドカリ類にとっても恐怖なのでしょう。崖の手前で立ち止まり、
みんな右往左往しています。しかも、落ちたら水。

  オカヤドカリ類は空気呼吸を行うため、水中に長時間いると
死んでしまいます。

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雌だ~!

 夏の満月の夕方、浜辺の草むらにはたくさんのオカヤドカリ類が
集まってきます。暗くなったら波打ち際に移動して、海に幼生を放す
(放幼生)ためです。雌が海岸で海水に浸かって卵を揺らすと、
卵の殻がはじけてゾエア幼生が海に放たれます。
 ここで卵を産むのではありません。

 放幼生に来た雌と交接する(精子を渡す)ため、雄も浜辺をウロウロ。
浜に降りてきた雌を見つけると追いかけて殻にしがみつき、交接を迫ります。
写真は、右上のムラサキオカヤドカリの雄が雌を抱えていて、他の2匹は
それを横取りに来た雄です。

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交接中…

 暗い中、雄がどうやって雌を区別しているのかわかりません。
においか?歩く時の音か? 間違えて雄に抱きつくと、抱きつかれた雄は
貝殻を振り回して合図?を送り、抱きついた方はあっさりあきらめてしまいます。

 うまく雌を捕まえた雄は、雌の貝殻を仰向けにして抱きかかえ、
触角や脚でノックしたりして求愛。でも、放幼生に向かう雌は急いでいるのか、
なかなか雄の求愛に応じません。雄を振り切って逃げる雌がたくさんいます。

 交接では、雄の腹部の一番前にある第1腹枝が変化した交接器を使って、
精子を雌の腹部にくっつけます。雌に気にいられれば、雄は危険を承知で
貝殻から身を乗り出し、雌に精子を渡します。
 上の写真は、ナキオカヤドカリです。

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放幼生する前に交接

 念のため、本当に交接したのかどうか、雌を捕まえて確認してみました。
もちろん、今回は天然記念物調査のために特別な採捕許可を得てあります。

 雌の腹部には、雄の白い精子の塊がしっかり付いていました。
精子の奥に見える茶色いツブツブは、孵化直前の卵です。
よく見ると、卵の中に黒い点々(ゾエアの眼)が見えます。

 雌が海水に浸かって放幼生しても、精子は流れてしまわないのでしょうか?
放幼生から帰ってきた雌を浜辺で捕まえて確認したところ、複数の雌で
雄の精子が付いているのを確認できました。

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やっと放幼生できる

 幾多の苦難を乗り越えて、やっと波打ち際までやって来た
ムラサキオカヤドカリの雌。
  普段は内陸部に生息するオカヤドカリも、放幼生の時にはや
はり海までやってきます。

 波打ち際で放幼生行動を観察していると、種類によって
放出の仕方が違うのが面白い。

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ゾエアを食べに来て捕まった魚

 たくさんのオカヤドカリ類が放幼生した波打ち際で、海水を
すくってみました。クーラーボックスで適当にすくったのですが、
海に放たれたゾエアと一緒に、ゾエアを食べに来た小魚(黒いやつ)まで
捕れました。イワシ系? きっと群れでゾエアを食べに来ている事でしょう。

 写真に写っている横スジは、クーラーボックスの底の模様です。
全体的に散らばっている砂粒の様な茶色い点々が、オカヤドカリ類の
ゾエア幼生です。結構高密度。

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巨大な花

 飼育実験環境では、約1ヶ月の浮遊期間の後、ゾエアからグラウコトエ
(メガロパ)幼生となって海岸近くに戻ってきます。
ここで微小巻き貝を拾って中に入り、砂浜に上陸するようです。

 上陸直後の全長2~3ミリ程度の個体は、赤っぽいガラス細工の様な繊細さ。
海岸の暑さを逃れて、石や打ち上げられた海藻の下などに隠れています。
数回脱皮して全長5ミリ程度に大きくなると、写真の様な色になります。
この段階では、どの種類かわかりません。暑い砂浜を越えて、彼らはさらに
陸側に移動します。

 ユウナの花も、彼らにとっては巨大な壁に見えることでしょう。

 

   オカヤドカリ類は永遠に?

 小型のナキオカヤドカリは海岸近くに植生や石垣などの隠れ家があれば
何とか生活できますが、大型になるムラサキオカヤドカリやオカヤドカリは、
隠れ家となる広い岩場やそれに続く広い内陸部(餌場)が無いと生きられません。

 砂浜を横切ってやっと海岸植生にたどり着いた小さな稚ヤドカリは、
卵を抱いた雌が通ってきた道を逆にたどり、干からびる前に、
滑るコンクリートの壁を登り、焼けたアスファルトの高熱に耐え、
海岸道路に並ぶ車の列をかわし、側溝を乗り越え、ブロック壁をよじ登って
行かねばなりません。おそらく、殆どの個体は、今見られる様な大型個体が
棲む場所にたどり着く事はできないでしょう。

 たしかに、今はまだたくさんのオカヤドカリ類が見られます。

 実は、オカヤドカリ類は25年も生きたと言う飼育記録があります。
つまり、彼らの生息環境がこれ以上悪化しないかぎり、あと20年位は
沖縄島でもオカヤドカリ類を見つける事ができるはずです。驚くことに、
海から遠く離れ、道路で何重にも取り巻かれた首里の雑木林でも、
大型のオカヤドカリを見る事ができます。

 でも、沖縄の島の周囲が護岸で塗り固められ、海岸道路が整備された今、
オカヤドカリ類を見かける頻度はこれからどんどん減っていき、30年後には
絶滅危惧種になっているかもしれません。

 そんな大げさな…と言うあなた。沖縄県の護岸の整備状況が気になれば、
沖縄県 土木建築部 港湾課 の琉球諸島沿岸海岸保全基本計画をごらんください。
高潮から沖縄の財産を守るため、堅牢な護岸の整備が計画されています。
今後10年ほどの海岸保全基本計画だけでもたいした距離です。
もちろんこれ以前にも護岸は設置されています。 

 海を拒絶した沖縄は、これからどうなるのでしょう。

 

海の環境教育のお問い合わせは        TEL O 9 O - 6 8 6 2 - 5 2 I 9          受付時間:10:00〜18:00

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