みなさんは、「水制」って、ご存知ですか??

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   右側の河岸から突き出た、石組みの出っ張りが「水制」。いくつも並んでます。
   川は手前から向こうに流れて左にカーブしているので、
   流れは右側の河岸に当ります。一方、左側の河岸には砂が溜まっています。

 

「日本水制工論」と言う古典的専門書によると、

  水制とは、水流の激突を防ぎ、また流れを変えたり導いたり、
 あるいは水路の水深や幅を保持するために河の中に設置する工作物で、
 これによって水流の方向を変えたり、
 また水制の陰に土砂の沈殿を誘導するのを目的とする。

と、言うことのようです。ようです…、と言うのは、
実は上記の太字の部分は原文を私なりに翻訳した内容だから。
ちなみに原文は、土木学会のウェブサイトからダウンロードできます。

ざっと読んだところでは、水制とは、川の中に作った人工的な構造物で、
普段の流れを利用して土砂を流したり、目的の場所に堆積させたり、
あるいは大水の時だけ流れを変えて護岸を守ったりするもの。
丸太を組んだり、杭を打ったり、石の詰まった籠を沈めたりする水制は
戦国時代から発達してきたようです。この水制の作り方や
使い方をまとめたのが、タイトルにある「日本水制工論」です。

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  左の写真では、川の左側の岸から点々と出っ張っている石組みが水制。
  その反対側の河岸には、丸太を組んだ囲いの中に礫が詰め込まれた水制があります。

近年、想定外の大雨が増えて川の増水が気がかりですが、大規模な河川改修工事には
時間も予算もたくさん必要で、すぐには対応できません。
一方、日本で独自に発達した、杭や丸太を使った透水構造の水制を効果的に使えば、
河川を守ったり壊れた所を応急処置したりするのに、より少ない設備と予算で
短時間のうちに対応できそう。しかも石組みの間には、カニやエビや小魚などの
河川生物も生息できるので、より自然に近い状態で河川改修が可能です。
ただここで1つ問題が。「日本水制工論」は昭和28年に書かれた専門書なので、
今の私たちには読みづらいんです…。
内容的にとても興味深いので、苦労して読みながら、わかりやすい言葉に翻訳中。

ちなみに、なぜこの本のことを知ったかと言えば、
写真の近自然工法による水制を沖縄の河川に施工した福留さんの論文に、
「日本水制工論」が重要文献として引用されており、
さらに「日本水制工論」の著者の眞田秀吉さんは、
何とMの曾お爺さんだったのです!

海につながる川だから、できるだけ自然な状態であってほしい。