満月の夜、カーミージーの岩の近くで、オカヤドカリ類の放幼生を観察しました。
天然記念物のオカヤドカリ類が生息する岩場は、道路工事によりずいぶん小さくなって
しまいましたが、まだ僅かながらオカヤドカリ類が暮らしているようです。
そして、このオカヤドカリ類が陸と海を行き来できるよう、新しい道路の下には、
オカヤドカリ類も通れるように、特別に設計・施工された通路が作られました。

 砂浜には、アダンやグンバイヒルガオ。砂浜にこれらの植物があることで、
オカヤドカリ類は、暑い時も木陰や葉陰で休むことができます。
海から上陸して来た稚ヤドカリも、これらの海岸植物があるおかげで
暑い砂浜を横切る時間が短くなり、生存率が高くなります。
道路が開通して人が増え、ホテルが開業して観光客が増えても、
オカヤドカリ類の加入のために、これらの自然植生は
残しておいてほしいものです。

 明るいうちに下見をして、日が暮れるのを浜辺で待っていると、
殻を背負っていないオカヤドカリを発見。泳ぎに来た人もたくさんいたので、
オカヤドカリに気づかずに踏まれて殻が壊されたのかもしれません。
お腹には、眼が透けて見える、孵化直前の卵をたくさん抱いています。

8時過ぎて暗くなり、月が昇ってくるころになると、
オカヤドカリ達が次々と波打ち際にやってきて、幼生を海に放つ姿を
観察することができました。

 これからも、オカヤドカリ達が安心して放幼生できるよう、
道路の街灯の光量や角度を制限したり、海岸の植生や地形などを残すなど、
暮らしやすい生息環境を保全してほしいと思います。

 海に放たれたゾエア幼生は、1ヶ月ほど海を漂いながら成長し、
どこかの海岸に泳ぎ着き、小さな貝殻を見つけて背負い、
砂浜を横切って草むらにたどり着いてから、やっと陸上での生活を始めます。
 護岸や海岸道路で囲われた沖縄島は、彼らにとって住みにくい場所と
なってしまいました。どこか、住み良い場所に流れ着いて、
頑張って生きて行けるといいのですが。